タイトル
第51巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

胸腺摘出術後に重症筋無力症を発症した2例

岩浪 崇嗣1, 井上 政昭2, 岩田 輝男1, 岡 壮一1, 川口 誠3
1新潟労災病院呼吸器外科, 2新小倉病院呼吸器外科, 3新潟労災病院病理診断科

背景.重症筋無力症(MG)非合併の胸腺摘出術後にMGを発症した2例を経験したので報告する.症例1.57歳女性.MG非合併胸腺腫と診断し拡大胸腺摘出術施行.正岡III期でWHO type B2であった.再発なく経過し,術後2年1ヶ月後にMG症状を発症,抗アセチルコリン受容体(AchR)抗体8.1 nmol/l(正常値≦0.2)と高値を示しMGと診断された.症例2.82歳女性.他疾患精査中に胸腺腫を指摘された.抗AchR抗体は高値であったがMGを疑う症状は認めなかった.拡大胸腺摘出術施行,正岡I期でWHO type ABであった.再発なく経過し,術後1年1ヶ月後にMG症状を発症,抗AchR抗体39 nmol/lと高値を示しMGと診断された.結論.胸腺腫治療に際しては,潜在的MGを除外するため術前に抗AchR抗体の測定は重要で,術前陽性例にはPTMGの発症の可能性が高いことを念頭に置いて術後経過を診る必要がある.PTMGの治療に際しては,MGの神経内科的評価を行うとともに,late onset症例は胸腺腫の再発を考慮し積極的に胸腺腫の再発検索を行い,治療方針を決定する必要があると考えられた.
索引用語:胸腺腫, 重症筋無力症, 胸腺摘出術, 術後重症筋無力症

受付日:2011年1月28日
受理日:2011年6月27日

肺癌 51 (4):274─278,2011

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