タイトル
第51巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

動眼神経麻痺,内耳神経麻痺で発症した肺癌による癌性髄膜症の1例

鈴木 妙子1, 濱口 俊一1, 神田 響1, 須谷 顕尚1, 久良木 隆繁1, 礒部 威1
1島根大学医学部附属病院呼吸器・化学療法内科

背景.脳神経症状を初発症状とした癌性髄膜症は非常にまれであるとされる.症例.89歳,男性.2007年秋より左難聴を自覚し,翌年1月より急激に悪化,右眼瞼下垂,眼痛も出現し,当院脳外科を紹介され受診した.頭部単純MRIで陳旧性脳梗塞と診断されたが,その後も右眼瞼下垂の進行と右眼球運動障害の出現を認め,Tolosa-Hunt syndromeの疑いでステロイド治療が開始された.しかしその後も症状は悪化し,頭部造影MRIを施行したところ,多発脳内転移巣を認め,さらに右動眼神経,左内耳神経に沿った淡い造影効果を認め,癌性髄膜症と診断した.その後全身検索で左肺S8に腫瘍を認め,喀痰細胞診で肺腺癌(cT4N2M1b,stage IV)と診断した.2月から全脳照射(30 Gy),全身化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)を開始したが,神経症状やMRI所見の改善は認めず,その後も嚥下障害や構音障害,難聴などが出現し,5月に永眠された.結論.脳神経症状で発症した肺癌による癌性髄膜症は非常にまれと考えられるため,これまでの報告とともに若干の考察を加え報告する.
索引用語:肺癌, 脳神経症状, 癌性髄膜症

受付日:2011年6月16日
受理日:2011年8月1日

肺癌 51 (6):730─735,2011

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