タイトル
第51巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

胸膜浸潤・播種のない原発性肺腺癌に癌性胸水を認めた1例

荒井 宏雅1, 乾 健二1, 西井 鉄平1, 千葉 佐和子2, 大城 久3, 益田 宗孝4
横浜市立大学附属市民総合医療センター 1呼吸器病センター, 2病理部, 3東京医科大学人体病理学講座, 4横浜市立大学医学部外科治療学

背景.稀ではあるが,臓側胸膜浸潤のない肺癌症例でも,術中に存在する胸水中に癌細胞が証明されることがある.臨床病理学的にも病期診断に極めて重要な所見であり,癌進展の自然史としても興味深い病態であるが,その機序は明らかでない.症例.血痰を契機に発見された左上葉原発,肺腺癌の68歳・男性.臨床病期はstage IAであった.術中所見では,少量の漿液性胸水を認めた他は,臓側胸膜面の変化や播種巣などはなく,sT1bN0M0D0E1(+)少量・漿液性PL0PM0:stage IAと診断した.術後病理診断では葉気管支間リンパ節に転移を認めた.癌組織の臓側胸膜浸潤は認めなかったが,胸水細胞診にて癌性胸水と診断され,最終的にpT1bN1(#11)M1a(E+):stage IVの診断となった.結論.癌性胸水の存在は,病期診断,術後の治療戦略上,極めて重要な所見である.術中に臓側胸膜表面に変化のない症例であっても洗浄細胞診を,また少量でも胸水が存在すれば胸水細胞診を積極的に施行すべきである.
索引用語:原発性肺腺癌, 胸膜浸潤, 癌性胸水, 胸水細胞診, リンパ管小孔

受付日:2011年5月20日
受理日:2011年9月22日

肺癌 51 (7):793─797,2011

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