タイトル
第52巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

急性炎症所見がないアデノシンデアミナーゼ低値原因不明胸水および胸膜肥厚症例の診断―悪性胸膜中皮腫の早期発見を目指して―

森山 悟1,2, 棚橋 雅幸2, 鈴木 恵理子2, 羽田 裕司2, 吉井 直子2, 山田 健3, 佐々木 秀文1, 矢野 智紀1, 藤井 義敬1, 丹羽 宏2
1名古屋市立大学腫瘍・免疫外科, 2聖隷三方原病院呼吸器センター外科, 3刈谷豊田総合病院呼吸器外科

目的.悪性胸膜中皮腫(malignant pleural mesothelioma:MPM)が疑われる,急性炎症所見がないアデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase:ADA)低値原因不明胸水および胸膜肥厚症例の臨床所見および診断方法についてretrospectiveに検討した.対象と方法.滲出性,リンパ球優位,抗酸菌および一般細菌検査陰性,ADA低値の原因不明胸水および胸水を伴う,伴わないにかかわらず,胸膜肥厚を認めた40例を対象に解析した.結果.男性30例,女性10例,平均年齢62.8歳であった.胸水細胞診で3例,胸膜肥厚部のcore-needle biopsyで3例がMPMと診断され,未確診の34例に全麻下胸腔鏡による胸膜生検を施行した.診断はMPM 20例,炎症性変化12例,悪性腫瘍の胸膜播種2例であった.胸水ヒアルロン酸が100 μg/ml以上の7例は全例MPMであった.胸部CTの胸膜不整肥厚・腫瘤形成群23例中20例と胸膜平滑肥厚群17例中6例がMPMと診断された.胸腔鏡所見では隆起型は隆起部の生検にて容易に診断可能であったが,肥厚型では丹念な観察による生検部位の選択と胸膜全層生検が必要と考えられた.結語.急性炎症所見がないADA低値原因不明胸水および胸膜肥厚症例では65%がMPMであり,胸腔鏡による胸膜生検を要する.
索引用語:悪性胸膜中皮腫, 胸水, 胸膜肥厚, 胸腔鏡下胸膜生検

受付日:2011年2月22日
受理日:2011年12月22日

肺癌 52 (1):10─16,2012

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