タイトル
第52巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

胸椎転移切除後,ゲフィチニブにて長期奏効したが獲得耐性化したため手術を施行したIV期肺癌の1例

小林 哲1, 井上 尚1, 葉山 牧夫1, 三好 祐顕2, 石井 芳樹2, 千田 雅之1
獨協医科大学 1呼吸器外科, 2呼吸器・アレルギー内科

背景.進行・再発肺癌に対する薬物治療法としてEGFR遺伝子変異陽性例についてはゲフィチニブの使用が推奨されているが,いずれ獲得耐性化することが多い.症例.65歳,女性.背部痛を主訴に受診.胸椎腫瘍を認め可及的切除術を施行された.胸部CTでは左下葉に結節影を認めた.病理組織所見から肺腺癌の胸椎転移と診断された(cT1N0M1,c-stage IV).CBDCA+PTX 2コース施行後,ゲフィチニブを導入,肺腫瘍の縮小が得られたが6年のあいだに腫瘍は緩徐ながら再増大傾向を示した.気管支鏡下肺生検を施行し腺癌が検出され,EGFR遺伝子検査にてT790M耐性遺伝子を認めた.遠隔転移巣は制御されている一方,原発巣がゲフィチニブ耐性化したものと判断し左下葉切除術を施行した.術後1年8か月現在無再発生存中である.結論.胸椎転移巣の手術後,ゲフィチニブにより長期制御が得られたが耐性獲得化したため,サルベージ手術を施行し良好な結果を得たIV期肺癌の1例を経験した.獲得耐性部位が原発巣のみに限局している場合には,IV期進行肺癌であっても外科療法を考慮すべき余地があると考える.
索引用語:肺癌, ゲフィチニブ, サルベージ手術, 単発骨転移

受付日:2011年8月2日
受理日:2011年11月16日

肺癌 52 (1):32─38,2012

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