第52巻第2号目次 | Japanese/English |
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─ 総説 ─
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性機構と克服
宗 淳一1, 豊岡 伸一1, 上野 剛1, 三好 新一郎11岡山大学病院呼吸器外科
本邦の肺腺癌の約40%に認められるepidermal growth factor receptor(EGFR)変異肺癌に対する有効な治療法の開発は,肺癌治療成績の向上において重要である.EGFR変異肺癌にはEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)が高い感受性を示すが,遺伝子変異がもたらすEGFR変異蛋白に対するEGFR-TKIとアデノシン3リン酸(ATP)の親和性の関係を知ることは感受性・耐性の原因を理解する上で大切である.また,薬剤に対する獲得耐性の機構としては,T790M変異に代表されるEGFR遺伝子の2次変異とMET遺伝子増幅などのキナーゼ乗り換え耐性の2つに大別される.EGFR-TKI耐性肺癌の克服には,これら耐性化機構の理解に基づいた新規薬剤および治療法の開発が不可欠である.多くの薬剤が開発されているが,heat shock protein 90(Hsp90)阻害剤は,変異型EGFR・MET・AKTなどの複数のクライアント蛋白の安定化を阻害することで抗腫瘍効果を示すため,様々な機構を持つEGFR-TKI耐性肺癌への治療効果が期待され,現在臨床試験が行われている.
索引用語:獲得耐性, EGFRチロシンキナーゼ阻害剤, T790M変異, ATP, Hsp90阻害剤
肺癌 52 (2):131─135,2012