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第52巻第2号目次 Japanese/English

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─ 総説 ─

未治療の非小細胞肺癌患者に対するゲフィチニブとカルボプラチン・パクリタキセルの第III相国際共同試験(IPASS)の全生存期間最終解析

里内 美弥子1, 一瀬 幸人2, 西脇 裕3, 大江 裕一郎3, 山本 信之4, 片上 信之5, 中川 和彦6, 木浦 勝行7, Haiyi Jiang8, Tony Mok9, 西條 長宏6, 福岡 正博6
1兵庫県立がんセンター呼吸器内科, 2九州がんセンター呼吸器科, 3国立がん研究センター東病院呼吸器内科, 4静岡がんセンター呼吸器内科, 5先端医療センター総合腫瘍科, 6近畿大学医学部腫瘍内科, 7岡山大学医学部呼吸器内科, 8アストラゼネカ, 9Department of Clinical Oncology, Chinese University Hong Kong

IPASS(Iressa Pan-Asia Study)は東アジアで行われた,化学療法未施行の肺腺癌で非喫煙者・軽喫煙者を対象に,ゲフィチニブとカルボプラチン・パクリタキセルを比較した第III相比較試験である.主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)はゲフィチニブ群で有意に延長したことはすでに報告されている.バイオマーカーでのサブセット解析も報告され,EGFR遺伝子変異のあるサブグループではゲフィチニブ群が有意にPFSを伸ばす一方,遺伝子変異陰性のサブグループではゲフィチニブ群のPFSが有意に劣ることも示されている.全生存期間(OS)に関する最終報告については2010年のESMOですでに報告されており,今回,同内容につき日本肺癌学会で報告した.全体の解析においてOSはゲフィチニブ群18.8ヶ月,化学療法群17.4ヶ月(HR=0.90)と両群で差がないことが示された.サブセット解析ではEGFR遺伝子変異陽性のサブセットでゲフィチニブ群の生存期間中央値が21.6ヶ月・化学療法群で21.9ヶ月,陰性例においてはゲフィチニブ群で11.2ヶ月・化学療法群で12.7ヶ月であり,EGFR遺伝子変異陽性例でいずれの群においても生存期間が長いことが示されたが,EGFR遺伝子変異の有無にかかわらず治療群によるOSの差はないことが示された.今回の発表内容を本稿で解説する.
索引用語:IPASS試験, ゲフィチニブ(イレッサ®), 上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子変異

肺癌 52 (2):153─160,2012

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