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第52巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

肺癌に対する縮小手術のEvidence―瘢痕癌から歴史的な縮小手術の第三相試験まで―

鈴木 健司1
1順天堂大学医学部呼吸器外科学講座

当時世界を席巻していた瘢痕癌という概念をShimosatoらが「革命的に」覆してすでに30年が経過した.この間,小型肺癌に関する研究は世界中から報告されるが,その量,質ともに日本の研究者が他を圧倒している.またその研究者の多くがShimosatoらの報告に大きな影響を受けていることは論を待たない.そして小型肺癌の領域において世界で最も有名な所謂“Noguchi分類”は1995年に報告されたのであるが,奇しくも小型肺癌に対する呼吸器外科史上唯一の縮小切除に関する第三相試験が報告されたのも同じこの年であった.一見無関係にみえる二つの報告であるが,この史上まれにみるタイミングをもって,その後の縮小切除の研究は大きく二つに分かれることになる.術前に「早期」肺癌を選択して縮小切除を行うという流れと,小型であることをもって縮小切除を行うという流れの二つである.前者は胃癌に例えるならば内視鏡的粘膜切除を早期胃癌に対して適応するといった考えであり,後者はリンパ節転移を起こす可能性のある肺癌に対しても縮小切除を適応するといった考えである.双方の考え方も利点と欠点があって,現在でもその考え方はお互いに譲らない形となっている.その結果,現在行われている縮小切除に関する臨床試験はまさに二つの臨床試験として行われており,ほぼ同時に米国で行われている試験が一つであることと極めて対照的である.そしてこれは肺癌学において日本の独創力が反映されているよい例であって世界に誇る研究であるといえる.そしてそのすべてはShimosatoらの報告に始まったのである.
索引用語:区域切除, 予後, 転移, 腺癌

肺癌 52 (2):182─189,2012

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