タイトル
第52巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

悪性胸膜中皮腫の早期発見への糸口―中皮腫の細胞学的特徴を分子レベルで考える―

辻村 亨1, 佐藤 鮎子1, 鳥井 郁子1, 亀井 敏昭2, 長谷川 誠紀3, 中野 孝司4
1兵庫医科大学病理学(分子病理), 2山口県立総合医療センター病理科, 兵庫医科大学 3呼吸器外科学, 4内科学(呼吸器・RCU科)

目的.悪性胸膜中皮腫(MPM)の胸水細胞診では,細胞質に重厚感がみられ,細胞封入像や多核細胞が高頻度に出現する.細胞質の重厚感には中間径フィラメントが関与し,細胞封入や多核細胞の形成には細胞融合を促す細胞接着分子が重要な役割を果たしている可能性がある.そこで,我々は,MPMと反応性中皮(RM)における中間径フィラメント及び細胞接着分子の発現を比較した.方法.MPMとRMの遺伝子発現プロファイルをAffymetrix Arrayにより取得し,中間径フィラメントの発現を検討した.MPMとRMの細胞診標本を作製して,細胞接着分子CD146に対する抗体(2種類のクローン)を用いて免疫染色を行った.結果.MPMでは,RMに比較して,種々の中間径フィラメントが強く発現していた.CD146免疫染色では,MPMはどちらかのクローンに対して陽性を示したのに対して,RMはいずれのクローンに対しても陰性であった.結論.MPMにおける中間径フィラメントの高発現が,細胞質の重厚感を生み出していると考えられた.CD146などの細胞接着分子の高発現が,細胞封入や多核細胞の形成に関与していることが示唆された.
索引用語:悪性胸膜中皮腫, 反応性中皮, CD146, 細胞接着分子, 中間径フィラメント

肺癌 52 (2):196─200,2012

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