タイトル
第52巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者における耐性獲得時のT790M変異検索の有用性

磯部 和順1, 秦 美暢2, 佐藤 敬太1, 佐野 剛1, 杉野 圭史1, 坂本 晋1, 高井 雄二郎1, 渋谷 和俊3, 高木 啓吾2, 本間 栄1
東邦大学医療センター大森病院 1呼吸器内科, 2呼吸器外科, 3病理

目的.上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者におけるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)耐性獲得時のT790M変異検索の有用性を明らかにする.対象および方法.過去6年間に当センターで加療したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者93例中,初回EGFR-TKI耐性獲得後T790M変異を検索した16例を対象とし,患者背景,T790M変異検索の検体採取部位・方法,T790M変異の発現率,EGFR-TKI再投与の効果についてretrospectiveに検討した.結果.原発巣のEGFR遺伝子変異はG719Cが1例,G719C+L858Rが1例,exon 19 deletionが6例,L858Rが8例.T790M変異検索部位は頚部リンパ節,肺が4例,縦隔リンパ節,髄液が各1例,胸水が6例.T790M変異は6例(38%)に検出され,残り10例では耐性獲得前と同じEGFR遺伝子変異が確認された.EGFR-TKIの再投与は11例に施行され,T790M変異陰性例(n=8)は陽性例(n=3)に比べ有意に無増悪生存期間(PFS)が延長し,EGFR-TKI再投与はT790M変異陰性例に有効であった(PFS中央値:15.0ヶ月vs. 1.0ヶ月,p=0.009).結語EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌におけるEGFR-TKI耐性獲得時のT790M変異検索は,EGFR-TKI再投与の適応を検討する際の患者選択として有用であることが示唆された.
索引用語:非小細胞肺癌, 上皮成長因子受容体遺伝子変異, 耐性遺伝子T790M変異, EGFR-TKI

受付日:2012年1月11日
受理日:2012年5月21日

肺癌 52 (3):279─283,2012

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