タイトル
第52巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

IL-6産生悪性胸腹膜中皮腫の1例

濱田 努1, 佃屋 剛1, 水野 圭子1, 寒川 卓哉1, 井上 博雅1
1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学

背景.悪性中皮腫には,治療効果判定として臨床応用されている血清マーカーは存在せず,病勢の判定が困難である.血清IL-6が治療効果を反映した1例を経験した.症例.症例は64歳男性.2008年3月に全身倦怠感・腹部膨満を主訴に近医を受診.炎症反応高値および腹部超音波検査で腹水を指摘され,精査目的に入院.38℃台の発熱が続き,白血球増多やCRP高値を呈した.2008年4月腹腔鏡検査にて生検を行い,上皮型中皮腫と病理組織学的に診断された.胸腹部造影CTにてびまん性腹膜肥厚と腹腔内腫瘤,腹水貯留に加え,横隔膜直上に不整な胸膜肥厚を認め,悪性胸腹膜中皮腫の診断となった.cisplatin(CDDP)とpemetrexed(PEM)の併用療法を施行され腹水の著明な減少を認めた.本症例は血清IL-6が高値であり,腫瘍細胞のIL-6抗体免疫染色が陽性を呈し,IL-6産生腫瘍と診断した.そして,抗癌剤治療により腹水が減少するとともに血清IL-6の減少がみられた.一方,腫瘍細胞のリン酸化STAT3の免疫染色も陽性であった.結論.本症例では血清IL-6値がより治療効果を反映しており,今後悪性中皮腫の有用な指標となりうると考えられた.
索引用語:IL-6, 悪性中皮腫, STAT3, JAK-STAT経路

受付日:2011年7月11日
受理日:2012年4月18日

肺癌 52 (3):290─295,2012

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