タイトル
第52巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

過誤腫が共存した肺内脂肪肉腫の1切除例

北原 美由紀1, 鈴木 久史1, 清嶋 護之1, 朝戸 裕二1, 飯島 達生2, 雨宮 隆太1,3
茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター 1呼吸器外科, 2病理科, 3雪谷大塚クリニック

背景.脂肪肉腫は四肢や後腹膜にしばしば発生するが,肺内発生および過誤腫共存例は稀である.症例.62歳男性.健診で胸部異常陰影を指摘され,精査加療目的に当院を受診した.初診時の胸部X線写真では,左下肺野全体の透過性低下を認めた.胸部CTおよびMRIでは,左胸腔内を広汎に占拠する内部不均一で脂肪成分を含む腫瘍を認めた.画像所見より,脂肪肉腫が疑われた.手術は左後側方切開で行い腫瘍切除術を予定した.しかし,腫瘍は左肺,心嚢および肺門の脂肪織と連続し正常脂肪織との境界が不明瞭であった.また,上下肺静脈と密に癒着していたため,左肺全摘・心膜合併切除術を施行し腫瘍の完全切除を行った.腫瘍は大きさ21×15×8.5 cm,組織学的には腫瘍の大半を占める領域は分化型脂肪肉腫と診断され,一部白色結節領域は過誤腫と診断された.術後補助療法なく2年経過するが再発は認めていない.結論.左肺全摘および心膜合併切除により完全切除し得た,過誤腫が共存する肺内脂肪肉腫の1例を経験した.分化型脂肪肉腫は外科的治療により良好な予後が期待できるため,完全切除を目指すことが重要である.
索引用語:脂肪肉腫, 縦隔腫瘍, 過誤腫, 肺内脂肪肉腫

受付日:2012年1月17日
受理日:2012年8月10日

肺癌 52 (6):890─896,2012

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