タイトル
第52巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

胸腺癌に気管原発MALTリンパ腫を合併し化学療法により両者の改善を認めた1例

古澤 春彦1,2, 大河内 稔1, 高山 聡1, 内堀 健1, 富永 慎一郎1, 夏目 一郎1
1横須賀共済病院呼吸器内科, 2東京医科歯科大学医学部附属病院呼吸器内科

背景.気管・気管支mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫はまれであり,胸腺癌との合併例の報告はない.胸腺癌は,診断時すでに転移や局所進行を認めることが多く予後不良であり,確立された治療法はない.症例.68歳男性.急激な呼吸循環不全により当院受診.画像上,前縦隔腫瘍と多量の心嚢水貯留を認めた.心嚢ドレナージにて全身状態が改善した後,縦隔鏡を施行し病理所見にて胸腺癌,正岡分類IVaと診断した.一方気管支鏡では気管粘膜下に隆起性病変を認め,生検標本では粘膜下に小型リンパ球様の細胞を認めた.免疫染色ではB細胞マーカーが陽性を示し,遺伝子再構成陽性でありMALTリンパ腫と診断した.カルボプラチン,パクリタキセル併用療法を施行し,著明な腫瘍縮小効果が認められた.4コース化学療法施行後に気管支鏡を再検したところMALTリンパ腫はほぼ消失していた.結論.胸腺癌とMALTリンパ腫の合併した症例にカルボプラチンとパクリタキセル併用化学療法で治療し,双方に対し有効であった.MALTリンパ腫は長期間の炎症に続発するといわれており,他悪性疾患との合併も検討する必要がある.
索引用語:気管・気管支原発MALTリンパ腫, 胸腺癌, カルボプラチン, パクリタキセル

受付日:2011年11月8日
受理日:2012年9月10日

肺癌 52 (6):919─924,2012

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