タイトル
第52巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

胸壁嚢腫を形成し,長期排液管理を要したが,放射線療法で治癒した肺癌胸壁転移の1例

花谷 崇1, 砂留 広伸1, 野口 哲男1, 松井 千里2, 河野 朋哉2, 寺田 泰二2
市立長浜病院 1呼吸器内科, 2呼吸器外科

背景.胸壁転移を伴う肺癌患者は,他部位への転移をしばしば伴い,胸壁転移巣をコントールしても予後の改善は期待できないことが多い.症例.61歳女性.肺腺癌に対して右肺中下葉切除を施行後3ヶ月目に右背部に10 cm大の腫瘤を自覚した.CT上嚢腫と診断され,嚢腫壁の針生検と内容液の細胞診を行ったが悪性像は認められなかった.腫瘤の緊満が続き,発症3ヶ月後に嚢腫の部分切除を行った.しかし嚢腫は再増大し,再度切除を行ったところ,肺腺癌の胸壁転移と診断された.その後,増加する滲出液のコントロール目的で約15 cmの皮膚切開を行い,嚢腫を開放創とした.創部のMRSA感染と大量の滲出液により全身状態が徐々に悪化したため,開放創ではあったが30 Gyの放射線治療を施行した.その後,ガーゼ交換を続けたところ,壊死した腫瘍が徐々に排出され,腫瘤は平坦となった.放射線治療8ヶ月後に開放創は上皮で覆われ完全に治癒した.結論.開放創とした胸壁転移巣であっても放射線治療に加えて,全身と局所の管理を十分に行うことにより,治癒できる可能性が示唆された.
索引用語:胸壁転移, 放射線療法

受付日:2011年3月7日
受理日:2012年9月19日

肺癌 52 (6):925─929,2012

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