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第52巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 第25回肺がん集検セミナー ─

肺癌検診の予後調査の必要性と問題点―がん登録の利用―

早田 宏1, 富田 弘志2, 早田 みどり3, 河野 茂4
1佐世保市立総合病院呼吸器内科, 2長崎県健康事業団, 3放射線影響研究所長崎県がん登録室, 4長崎大学医学部第二内科

目的.肺癌住民検診の効果が性・組織型別に異なるか,検討を行った.方法.胸部X線を用いた肺癌検診のデータを長崎県がん登録のデータと照合し,検診の感度,過去フィルムでの肺癌陰影の有無,肺癌患者の10年生存率を評価した.結果.肺癌検診の感度は腺癌で0.85,扁平上皮癌で0.52であった.10年生存率は腺癌で26.7%,扁平上皮癌で5.0%であった.扁平上皮癌では検診発見と検診外発見の10年生存率の差は小さかった.女性腺癌のほとんどは検診発見2~3年前に,男性腺癌は検診発見前1~2年前に肺癌陰影が出現した.一方,扁平上皮癌は検診発見1年以内の出現がほとんどであった.扁平上皮癌は発育の早い癌であり,腺癌,特に女性腺癌は発育が緩徐な癌であることが示唆された.10年生存率(検診集団vs. 長崎県一般集団)は,女性非小細胞癌(31.8% vs. 22.3%),男性非小細胞癌(16.6% vs. 13.9%),女性腺癌(36.3% vs. 24.1%),男性腺癌(22.4% vs. 14.7%),扁平上皮癌(5.7% vs. 13.4%)であった.結語.今回の結果より,肺癌X線検診の効果は女性腺癌,男性腺癌,扁平上皮癌の順で低下する可能性が示唆された.様々な対象集団の研究の結果から肺癌検診の有効性を論じる場合には,その集団内の性・組織型の構成の違いに注意をより払うべきと考えられる.
索引用語:肺癌検診, 肺癌登録, 生存解析

肺癌 52 (6):961─967,2012

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