タイトル
第52巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

胸壁原発胞巣状軟部肉腫の1例

伊藤 俊輔1, 平居 義裕1, 渡部 克也2, 外岡 暁子3, 植草 利公3, 金子 猛4
独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院 1呼吸器内科, 2呼吸器外科, 3病理診断科, 4公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター

背景.胞巣状軟部肉腫(alveolar soft part sarcoma)は軟部腫瘍の約1%を占め,小児や若年者の四肢,特に下肢に好発する稀な軟部組織悪性腫瘍である.今回我々は健診胸部単純X線写真で胸壁腫瘍として発見され,胸腔内に向かって進展し,稀な発育形式を呈した胞巣状軟部肉腫の症例を報告する.症例.症例は19歳男性.2011年4月に健診で胸部単純X線写真上,右上肺結節影を指摘され当院紹介受診となった.胸部X線写真で右上肺野に類円型で辺縁平滑な20 mm大の結節影を認めた.胸部造影CTでは右肺上葉背側胸膜に胸腔内に突出する24 mm大の,内部が均一に造影される腫瘤を認めた.若年であり,悪性疾患の可能性もあることから,早期診断のため胸腔鏡下切除術を施行した.摘出した腫瘍の細胞核は,免疫染色でTFE3陽性であり,病理学的形態と合わせ,胞巣状軟部肉腫の診断であった.術後,全身検索の目的で施行したPET/CTおよび頭部・下肢MRIにて転移巣および原発巣を認めず,胸壁原発胞巣状軟部肉腫と診断した.結語.若年者の胸壁腫瘍は比較的良性疾患が多く,経過観察することが多い.しかし,本症例のように稀ではあるが悪性疾患も認めることから,CTガイド下肺生検や胸腔鏡下生検などの病理学的精査が早期診断に重要であると考える.
索引用語:胸壁, 原発, 胞巣状軟部肉腫

受付日:2012年9月4日
受理日:2012年11月30日

肺癌 52 (7):1052─1056,2012

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