タイトル
第53巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

原発巣,リンパ節転移巣がともに自然退縮したG-CSF産生肺大細胞癌の1例

河井 康孝1,3, 須甲 憲明1,4, 福元 伸一1, 竹内 裕1,5, 大泉 聡史2, 原田 真雄1
1国立病院機構北海道がんセンター呼吸器内科, 2北海道大学医学部内科I, 3王子総合病院呼吸器内科, 4札幌国税局診療所, 5独立行政法人労働者健康福祉機構北海道中央労災病院内科

背景.原発性肺癌の自然退縮は非常に稀な現象である.症例.55歳,男性.右頚部腫瘤を自覚し,前医にて頚部リンパ節生検を施行されたが壊死が強く確定診断はできなかった.右肺尖腫瘤もあり,当科にて経気管支肺生検を行ったところ,組織像は瘢痕像のみでやはり確定診断は得られなかった.その後,肺腫瘤および頚部リンパ節はともに無治療で縮小を続けたが,8か月後に別の右頚部リンパ節腫大が新たに出現し生検にて分化度の低い癌細胞を認めた.さらに右肺上葉切除術を施行した結果,肺大細胞癌と確定診断された.肺原発巣および頚部リンパ節ともにHLA class Iの強い発現とCD8リンパ球浸潤を認めた.また経過中,病状悪化時には白血球数および血清G-CSFも高値であり,腫瘍細胞も免疫組織学的にG-CSF陽性であったため,G-CSF産生腫瘍と考えた.結論.悪性腫瘍の自然退縮はいまだその機序は解明されていないが,HLA class I発現やCD8リンパ球浸潤など腫瘍免疫が深く関与していると考えられる.本症例はG-CSF産生肺大細胞癌が自然退縮を示したと推察される興味深い症例と考え報告した.
索引用語:肺大細胞癌, 自然退縮, G-CSF産生腫瘍

受付日:2012年9月21日
受理日:2013年5月9日

肺癌 53 (3):227─233,2013

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