タイトル
第53巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

限局性悪性胸膜中皮腫の切除後に,肺癌を合併した1例

高田 宗尚1, 斉藤 裕1, 矢鋪 憲功1
1厚生連高岡病院胸部外科

背景.アスベスト曝露に起因した悪性腫瘍の研究により,遺伝子異常を介した発癌機序が示された.限局性悪性胸膜中皮腫を切除後に,肺癌を発症した1例を経験したので報告する.症例.アスベスト曝露歴のある71歳男性.右前胸部腫瘤の加療目的に当科へ紹介された.画像所見では右前側胸壁に肋骨や肺へ浸潤する腫瘤影を認め,腫瘍生検では消化管からの転移性腫瘍を疑われたが,明らかな原発巣は同定し得ず診断と治療を目的に手術を施行した.腫瘍切除,胸壁合併切除(第III,IV肋骨切除),肺部分切除を行った.腫瘍は最大径6.4 cmの二相型限局性悪性胸膜中皮腫であった.手術1年後の胸部CTで右肺下葉胸膜直下に新たな1.5 cm大の肺病変を認め,診断と治療を目的に右肺下葉部分切除術を施行し,気管支肺胞上皮置換性増殖型の原発性肺腺癌であった.結論.限局性悪性胸膜中皮腫切除後に原発性肺癌を発症した1例を経験した.アスベストは多重癌の発癌因子であり,第2癌の出現に注意すべきである.
索引用語:限局性悪性胸膜中皮腫, 肺癌, アスベスト

受付日:2012年11月29日
受理日:2013年5月27日

肺癌 53 (3):245─249,2013

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