タイトル
第53巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

上大静脈症候群への血管内ステント留置を行った悪性胸膜中皮腫の1例

長島 聖二1,2, 福田 実2, 北崎 健2, 御手洗 和範3, 森 雅一3, 河野 茂1
1長崎大学病院第2内科, 日本赤十字社長崎原爆病院 2呼吸器内科, 3放射線科

背景.上大静脈症候群は緊急的な合併症である.しかしながら本邦における静脈内ステント留置術は保険適応対象外診療であるので,あまり行われていない.症例.67歳の男性.悪性胸膜中皮腫に対して化学療法を行っていたが,診断より2年2ヶ月後呼吸困難が強くなり入院した.胸部CT検査では右胸膜病変が増大し,上大静脈,右主肺動脈,右主気管支を狭窄していた.顔面を含む上半身の浮腫,頚静脈怒張を認め,上大静脈症候群と診断した.SpO2は保たれているのに強い呼吸困難を訴え,放射線治療を開始して効果が出るまで待てない切迫した状況になった.患者家族の説明同意を得て,上大静脈狭窄部にステント留置術を行った.治療直後より症状は改善し,合併症はなかった.3ヶ月後に在宅診療へ移行するまで上大静脈症候群の再発は認めなかった.結論.静脈内ステント留置術は,悪性胸膜中皮腫による上大静脈症候群に対して有用で安全な治療であった.上大静脈症候群に対する血管内治療の保険適応拡大が期待される.
索引用語:悪性胸膜中皮腫, 上大静脈症候群, ステント

受付日:2012年10月19日
受理日:2013年6月10日

肺癌 53 (3):250─254,2013

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