タイトル
第54巻第2号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (897K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

胸腺腫(WHO分類Type B3)術後に発症した重症筋無力症の1例

福井 麻里子1, 高持 一矢1, 北村 嘉隆1, 王 志明1, 林 大久生2, 鈴木 健司1
順天堂大学医学部 1呼吸器外科, 2病理診断科

背景.術前に重症筋無力症の症状を伴わない胸腺腫症例でも,術後に重症筋無力症を発症することがあり,post-thymectomy myasthenia gravisとして報告されている.症例.70歳男性.前縦隔腫瘍に対して胸腺および腫瘍切除,上大静脈・両側腕頭静脈合併切除,血行再建を行った.術前針生検および術中迅速病理診断は胸腺癌であった.術後経過良好で第14病日に退院したが,第20病日に徐々に増悪する臥位での呼吸困難を主訴に再入院した.第22病日に突然心肺停止となり,人工呼吸管理を開始した.ステロイドパルス療法,免疫吸着療法施行後,ステロイド,免疫抑制剤内服を開始し,挿管後51日で人工呼吸器から離脱した.精査の結果,重症筋無力症と診断された.切除検体の再評価で病理診断は胸腺腫(WHO分類Type B3)に変更された.結論.本症例は胸腺癌と診断されていたこと,発症時の症状が非典型的であったことから診断に難渋した.術前無症状であってもpost-thymectomy myasthenia gravis発症の可能性に留意すべきである.
索引用語:胸腺腫術後発症重症筋無力症, 姿位性低酸素血症, B3型胸腺腫

受付日:2013年7月15日
受理日:2014年2月12日

肺癌 54 (2):52─56,2014

ページの先頭へ