タイトル
第54巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

A4+5+9+10が左主肺動脈より共通幹として分岐した肺癌左上葉切除の1例

矢島 澄鎮1, 閨谷 洋1, 高橋 毅1
1藤枝市立総合病院呼吸器外科

背景.肺動脈分岐異常は肺切除術においてしばしば遭遇するため注意が必要である.今回我々は左主肺動脈からA4+5+9+10が分岐する稀な症例を経験したので報告する.症例.74歳男性.検診発見にて当院受診し精査後手術となった.術前に行われた胸部CTで気管支と上肺静脈の間を下降する縦隔型肺動脈枝を指摘でき,舌区だけでなく下葉まで流入していることが疑われた.手術は腋窩第4肋間開胸にて胸腔鏡補助下に行った.まず腫瘍部を部分切除し,術中迅速診断にて肺癌との診断をえて上葉切除に移行した.左肺動脈の第1分岐として上肺静脈と気管支の間を下降する縦隔型肺動脈枝を認めた.下葉枝も含まれていることを疑っていたため上肺静脈を切離した後,慎重に剥離して走行を確認しA4+5への分岐を切断しA9+10を安全に温存できた.葉間面からはA4a,A6が分岐し末梢はA8のみに流入していると思われた.結論.縦隔型舌区枝はしばしば遭遇するのに比べ,下葉まで流入していることは稀ではあるが,術中損傷や誤った判断による結紮切離を予防するためにも術前CTを詳細に読影,検討し手術に臨むことが肝要と思われた.
索引用語:縦隔型肺動脈, 肺動脈異常分岐, 肺癌

受付日:2014年1月10日
受理日:2014年3月11日

肺癌 54 (2):84─88,2014

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