タイトル
第54巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

急性呼吸不全で死亡した顆粒球コロニー刺激因子産生肺大細胞癌の1剖検例

藤本 栄1, 三浦 陽介1, 吉田 勤2, 藤田 敦2, 湊 浩一1, 飯島 美砂3
群馬県立がんセンター 1呼吸器内科, 2呼吸器外科, 3臨床病理検査

背景.顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)産生肺腫瘍は,予後不良な腫瘍であるが,予後不良因子としての腫瘍産生G-CSFの関与は明らかでない.近年,G-CSF製剤が急性呼吸促迫症候群(ARDS)・間質性肺炎を引き起こすことが報告されている.本症例は,剖検時にびまん性肺胞障害(DAD)を認め,腫瘍産生G-CSFとARDSとの関連性が示唆されたため報告する.症例.67歳,男性.右下葉肺腺癌術後18ヶ月の左肺下葉病変を再発と診断し,化学療法を施行した.左下葉肺癌の増大中に,発熱,白血球増多,CRP高値を認めたが,抗菌薬に反応せず,G-CSF産生腫瘍が疑われた.呼吸困難,貧血,白血球増多のため緊急入院し,上部消化管内視鏡にて出血性の胃腫瘍を認めた.進行性貧血のために輸血を行ったが,急性呼吸不全で死亡した.剖検では左肺下葉原発の大細胞癌であり,胃,小腸の転移巣を認め,全てG-CSF免疫染色陽性,剖検時血清G-CSF高値であり,G-CSF産生肺大細胞癌と診断した.非腫瘍部はDADの像であった.結論.G-CSF産生腫瘍では急性呼吸不全を起こす危険性があり,予後不良の一因と考えられた.
索引用語:顆粒球コロニー刺激因子, 肺癌, 大細胞癌, 白血球増多, 急性呼吸促迫症候群

受付日:2013年12月27日
受理日:2014年6月13日

肺癌 54 (4):199─205,2014

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