タイトル
第54巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

両側肺癌を含む同時性四重複癌治療後に心筋転移を生前に診断し得た1剖検例

前田 篤史1, 岩田 隆1, 戸田 道仁1, 上松 正朗2, 渡部 徹也2, 藤田 雅史2
関西労災病院 1呼吸器外科, 2循環器内科

背景.悪性腫瘍の心臓(心筋)転移は生前に診断されることは稀である.今回我々は生前に心電図や心エコーにより悪性腫瘍の心筋転移を診断し,剖検によって確認した症例を経験したので報告する.症例.75歳女性.悪性リンパ腫,両側原発性肺癌,直腸癌など同時四重複癌に対してそれぞれ化学療法,両側肺切除術および術後補助化学療法,直腸切除術の治療を行った.その後右肺癌によると思われる肺門部リンパ節再発を来したため放射線治療を行い,その後緩和治療となっていた.間質性肺炎を合併しており以前から呼吸苦はあったが,その増悪を訴えられ外来受診.胸部X線像上心陰影の拡大を認め精査加療目的に入院となった.心電図にてV2-3のST上昇,心臓超音波検査にて前壁から側壁に多発する低エコー領域を認め心筋転移と診断された.強心剤や利尿薬などの投与を行ったが入院後5日目に死亡された.病理解剖にて心臓超音波検査での低エコー領域に一致して心筋内に腫瘍の浸潤を認め,病理組織検査にて右肺腺癌の転移と確定診断された.結論.生前に診断された稀な心筋転移の1例を経験した.
索引用語:肺癌, 心臓転移, 心臓超音波検査, 心電図

受付日:2014年4月21日
受理日:2014年7月18日

肺癌 54 (6):772─777,2014

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