タイトル
第54巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺性肥大性骨関節症を発症した肺扁平上皮癌の1例

宮田 亮1, 喜夛村 次郎1, 河野 朋哉1, 野口 哲男2, 黒澤 学3, 田久保 康隆1
市立長浜病院 1呼吸器外科, 2呼吸器内科, 3病理診断科

背景.肺性肥大性骨関節症は,ばち状指,長管骨の骨膜新生,関節炎を三徴とする,腫瘍随伴症候群の一つである.症例.49歳,男性.前医で両膝関節痛の対症療法を受け,経過観察されていた.6か月後の胸部単純X線写真で腫瘤を指摘され,精査で非小細胞肺癌の診断が得られた.ばち状指,関節痛に伴う運動障害,骨シンチグラフィで長管骨に両側対称性の取り込みが認められることから,肺性肥大性骨関節症と診断された.対側縦隔リンパ節転移が疑われたが,急速成長を示す腫瘍による有害事象を回避する目的で姑息的に右肺上葉切除術が行われた.術後診断は肺扁平上皮癌(pT3N3M0,c-stage IIIB)であった.関節痛は術後1日目に消失し,腫瘍切除が症状改善に強く関連しているものと考えられた.本症例で摘出肺の腫瘍細胞の免疫組織化学染色では,VEGF-A(vascular endothelial growth factor-A)陽性で,血清中のVEGF-A濃度は術後3週間で基準値内に低下した.術後化学療法と放射線治療を追加し,治療開始後20か月の現在,症状の再発なく生存中である.
索引用語:肺癌, 扁平上皮癌, 肺性肥大性骨関節症, 姑息的手術, VEGF

受付日:2014年2月23日
受理日:2014年8月29日

肺癌 54 (6):800─805,2014

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