タイトル
第54巻第6号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (664K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

ゲフィチニブ耐性癌性髄膜炎に対し,エルロチニブが用量依存性に奏効した肺腺癌の1例

矢島 剛洋1, 神宮 大輔1, 生方 智1, 渡辺 洋1
1宮城厚生協会坂総合病院呼吸器内科

背景.癌性髄膜炎に対してゲフィチニブからエルロチニブへの変更が奏効し,かつ,用量依存性の効果が見られた症例を経験したので報告する.症例.68歳女性,非喫煙者.肺腺癌cT1bN3M1b,EGFR遺伝子変異陽性(Exon 21:L858R)であり,初回治療としてゲフィチニブが投与されPRで経過していた.投与開始10ヶ月目よりCEA増加傾向が見られたがPDと判定する病変はなく,ゲフィチニブが継続されていた.12ヶ月目に頭痛,嘔吐,食欲不振があり入院した.髄液検査ではCEA増加はなく細胞診は陰性だったが,蛋白上昇,糖低下が見られた.頭部MRIで左基底核に脳転移,脳表の高信号所見があり,総合的に癌性髄膜炎と判断した.エルロチニブ150 mgに変更したところ速やかに症状は軽快し,CEAも減少した.しかし,重度の皮疹のためエルロチニブを100 mgに減量したところ,頭痛などの症状は増悪し,CEAも再び増加した.エルロチニブを100→125→150 mgと漸増したところ自覚症状やCEAは改善した.結論.ゲフィチニブ耐性後でもエルロチニブを十分量投与することで,癌性髄膜炎に対する治療効果が期待される可能性が示唆された.
索引用語:エルロチニブ, ゲフィチニブ, 肺腺癌, 癌性髄膜炎, EGFR遺伝子変異

受付日:2014年6月25日
受理日:2014年8月29日

肺癌 54 (6):806─811,2014

ページの先頭へ