タイトル
第54巻第7号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (521K)
Article in Japanese

─ 総説 ─

肺癌に対する新薬の開発状況

笠原 寿郎1
1金沢大学医薬保健研究域医学系細胞移植学呼吸器内科

近年の分子生物学の進歩は,非小細胞肺癌の新たな治療標的の同定と治療戦略の開発につながっている.非小細胞肺癌においてはチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の開発とEGFR遺伝子変異の発見,EGFR遺伝子変異がTKIの感受性規定因子であることが証明され,driver mutationとして認識されるようになった.これ以降ALK融合遺伝子の発見もあり,非小細胞肺癌に対する分子標的治療薬が目覚ましいスピードで発展している.EGFR阻害剤は第2世代のTKIが実地診療に応用され,さらに第3世代のTKI,すなわちEGFR変異陽性癌細胞に対する特異性を高めたTKIの開発が進んでおり,きわめて有望である.今まで十分な有用性が示されなかったKras陽性症例においてもMEK阻害剤が有効である可能性が示され,血管新生阻害剤についても新しい進歩が見られている.Braf阻害剤はすでに悪性黒色腫で有用性が証明されているが,非小細胞肺癌でも少数例ながら遺伝子変異が見られ有望である.HSP90阻害剤は大きな第III相試験が行われたが,有用性が証明されたのか,今後の検討が必要である.Met阻害剤は現状で有望なものがない.今後もdriver mutationを標的とした新薬開発が進むと考えられる.
索引用語:ドライバー遺伝子変異, 上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤, 血管新生

肺癌 54 (7):898─902,2014

ページの先頭へ