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第54巻第7号目次 Japanese/English

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─ 総説 ─

粒子線治療(陽子線治療,重粒子線治療)

石川 仁1, 大西 かよ子1, 水本 斉志1, 大城 佳子1, 奥村 敏之1, 櫻井 英幸1
1筑波大学医学医療系放射線腫瘍学

目的と方法.荷電粒子線には陽子線と炭素イオン線があるが,その共通した特徴はX線に比して物理学的に有利な点である.I期肺がんに対するX線での定位照射と比較して,粒子線治療がどのような症例に対してより有効であるかを自験例から検討するとともに,文献的考察を行った.結果.I期肺がんに対するX線による定位照射では6方向以上の多門照射や回転照射を用いるが,粒子線では2~4方向のビームで治療可能である.胸部照射では肺そのものが線量制限因子であり,5~30 Gyと低~中線量の照射容積が肺臓炎の発生頻度やその重篤度に相関する.それ故,腫瘍径の増大とともに,粒子線治療はより安全に施行できると考える.実際,Grade 3の肺障害はX線定位照射では0~28%とばらつきがあるが,粒子線治療では8%以下である.治療効果に関しては,I期肺がんでは腫瘍径によって治療成績が左右されるが,炭素イオン線はX線に比し高い生物学的効果が期待できるため,比較的大きい腫瘍に対する治療に有利と考えられた.結論.今後はX線の高精度治療技術の応用に加え,スキャニング法など粒子線独自の技術応用が期待される.その上で,質の高い前向きの多施設共同研究が粒子線治療の有効性を示す上で必要である.
索引用語:肺がん, 炭素イオン線治療, 陽子線治療, 線量容積ヒストグラム, 放射線肺障害

肺癌 54 (7):917─925,2014

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