タイトル
第54巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

傍腫瘍性辺縁系脳炎を合併し,自然退縮傾向を呈した肺小細胞癌の1例

小島 弘1, 今井 陽子2, 西山 薫1, 菅谷 文子1, 小場 弘之1, 篠原 敏也3
1手稲渓仁会病院呼吸器科, 2札幌医科大学第三内科, 3手稲渓仁会病院病理検査科

背景.悪性腫瘍の自然退縮は稀な現象であり,特に原発性肺癌での報告は極めて少なく,その機序も不明確である.症例.77歳男性.2011年2月上旬,腹痛,便秘の主訴にて近医受診し,胸部CT上,右S3aに境界明瞭な腫瘍性病変と縦隔リンパ節腫大を指摘.FDG-PET上,同部に有意な集積像を認め,3月上旬当科紹介.右肺腫瘍に対する気管支鏡下擦過細胞診にて小細胞癌細胞検出.PS不良のため経過観察中,肺腫瘍と縦隔リンパ節は自然退縮傾向を呈したが,認知機能障害,神経障害の進行を認め,傍腫瘍性辺縁系脳炎(PLE)の発症が疑われた.確定診断目的に胸腔鏡下縦隔リンパ節摘出を施行し,小細胞癌の転移と診断.免疫組織化学的検討で癌細胞のHLA class IA,B,Cの高発現と癌胞巣へのCD8陽性細胞の高度浸潤を認め,また,cleaved caspase-3陽性腫瘍細胞も比較的高密度に認めた.結論.自然退縮傾向を呈したPLEを伴う肺小細胞癌の1例を経験した.自然退縮には免疫応答の関与が推察された.
索引用語:肺小細胞癌, 自然退縮, HLA class I, CD8陽性細胞, Cleaved caspase-3

受付日:2014年9月9日
受理日:2014年10月4日

肺癌 54 (7):955─961,2014

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