タイトル
第55巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

EGFR遺伝子変異を認めるもゲフィチニブに早期獲得耐性を示した粘液産生肺腺癌の1例

岡田 あすか1, 鹿子木 貴彦1,2, 村上 伸介1, 竹中 英昭1, 長 澄人1, 大林 千穂3
1大阪府済生会吹田病院呼吸器内科, 奈良県立医科大学 2内科学第二講座, 3病理診断学講座

背景.粘液産生肺腺癌においてはKRAS遺伝子変異やanaplastic lymphoma kinase(ALK)融合遺伝子が多く報告されている.EGFR遺伝子変異陽性の粘液産生肺腺癌は稀であり,ここに報告する.症例.62歳の女性.咳嗽と労作時呼吸困難を主訴に来院され,胸部X線写真で右中肺野の濃い浸潤影と,両側上肺野を中心に多発結節影を認めた.画像・病理組織学的検査より粘液産生肺腺癌cT4N3M1b(両側肺内転移,右胸水,多発骨転移)と診断,EGFR遺伝子変異陽性が判明したためゲフィチニブの投与を開始,肺内の陰影は縮小しPR(RECIST v1.1基準)と判断したが,治療開始後約4ヶ月の経過で癌性胸膜炎・心膜炎が出現・増強した.化学療法は拒否されており,その後全身状態悪化によりゲフィチニブ開始198日目に永眠された.結論.EGFR遺伝子変異陽性で粘液産生が認められた,稀な肺腺癌の1例を経験した.治療効果が見られたものの,早期に再増悪を認めたことと免疫組織学的形態の関係性に関しては未だ不明であり,薬物動態の検討など今後さらなる症例の蓄積が待たれる.
索引用語:粘液産生腺癌, EGFR遺伝子変異陽性, ゲフィチニブ, 早期獲得耐性

受付日:2015年2月25日
受理日:2015年5月15日

肺癌 55 (3):166─170,2015

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