タイトル
第55巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

経過中に副腎転移からの出血をきたし,短期間で死亡に至った肺腺癌の1例

梅下 会美1, 高桑 修1, 小栗 鉄也1, 下平 政史2, 上村 剛大1, 新実 彰男1
名古屋市立大学大学院医学研究科 1呼吸器・免疫アレルギー内科学, 2放射線医学分野

背景.副腎は原発性肺癌の頻度の高い転移部位であるが,肺癌副腎転移巣からの出血の報告は稀である.今回,副腎転移からの出血を契機に診断から短期間で死亡した症例を経験したので報告する.症例.68歳男性.咳と倦怠感を主訴に当院を受診した.CTにて右上葉結節影と右胸水,両副腎腫大の所見があり,右胸水細胞診で腺癌細胞を認め,FDG-PET検査を含めた全身精査の結果,IV期原発性肺腺癌と診断した.抗癌剤治療のため入院予定であったが,初診から12日目に右腰部背側に皮下出血が出現し救急外来を受診.血液検査でヘモグロビン値の低下があり,腹部CTで右副腎の著明な腫大と周囲の液体貯留像を認め右副腎転移巣からの出血と診断した.輸血を行い保存的に経過をみたが,入院第9病日に再出血を認めたため右副腎動脈造影と塞栓術を施行した.その後は肺癌の進行による呼吸不全悪化のため緩和治療の方針となり,入院から25日目に死亡した.結論.肺癌の副腎転移巣からの出血は予後不良な経過をたどることが多く,臨床上注意が必要である.
索引用語:肺癌, 副腎出血, 副腎転移

受付日:2015年2月10日
受理日:2015年5月24日

肺癌 55 (3):183─187,2015

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