タイトル
第55巻第3号目次 In Japanese

─ 編集後記 ─

編集後記

一瀬 幸人
国立病院機構九州がんセンター臨床研究センター

この夏発刊が予定されております55巻3号は,7編の症例報告のみから構成されております.いずれの報告も臨床の場において重要であると思われますが,残念ながらすでにいくつかの前例があり,世界で初めての症例はありませんでしたし,新たな臨床試験の提案もありませんでした.従いまして,今後さらに増えることが予想される症例報告の質の改善に向けての何らかの提案をすべきと思われます.学会本部で編集作業に携わっている方の情報によりますと,2014年度は投稿から採択までの期間が平均で約4ヶ月かかったということです.それに引き換え,本号のそれは79日(2.6ヶ月)が平均ということでした.中央値においても71日ということで,かなり短縮されております.おそらく,杏林舎のオンライン査読投稿システム(ScholarOne Manuscripts)の編集者側の慣れ等が時間短縮に寄与していると思われます.2回の投稿で採択5編(38~103日),3回の投稿で採択2編(71,134日)という投稿側の問題(異動,立場等)も大と思います.実際,全ての7症例とも4月1日を超えて4月7日から5月24日までの採択でした.卒業年齢と採択までに要した年数と相関が見られませんでした.また,非常勤医師や助教,あるいは医員という立場にも大きな差は見られませんでした.ただ驚いたことは,全ての筆頭者がそのまま別刷請求先となっていたことです.すなわち,英文論文でいうところのcorresponding authorを兼ねているということです.一般に症例報告は若い医者に臨床現場において科学的な見方を教える目的で取られる手法であり,且つ,うまくいくとオリジナリティーある臨床試験を見つける一手段となります.従いまして,投稿に際しては,経験ある査読者とのcrosstalkという貴重な時間を無駄にすることなく有意義なディスカッションをすることが,最も重要です.そのためには,少なくとも肺癌学会では別刷請求者である責任者を,大学で言えば疾患チーフ以上の講師,病院で言えば疾患特異的リーダーである医長より上の方をcorresponding authorとし,共著者総てにおいて問題点が明らかになっているような症例報告を期待したいものです.最後になりましたが,投稿いただいた先生方,査読いただいた先生方に心より感謝申し上げ,今後の肺癌学会雑誌においてより質の高い症例報告が査読できることを期待したいと思います.

肺癌 55 (3):188─188,2015

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