第55巻第4号目次 | Japanese/English |
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─ 第29回肺がん集検セミナー ─
肺がん生存率の国際比較
伊藤 ゆり1, 中山 富雄11大阪府立成人病センターがん予防情報センター疫学予防課
目的.がん生存率の国際共同調査CONCORD study(2005~2009年診断症例)において,肺がんの5年相対生存率は,日本は30.1%と特に高いことが示された.日本の肺がん患者の生存率が他国と比べて高い理由を検討する.方法.日本のがん患者の生存率共同調査(J-CANSIS)データの結果を精査するとともに,国際共同調査ICBPの結果と比較する.進行度別,組織型別,年齢階級別に報告値を比較し,肺がん生存率の国際的な違いについて要因を検討する.結果.J-CANSISデータより,日本の肺がん患者の10年相対生存率は女性が男性より高く,著しく向上していた.ICBP参加国との結果を比較すると,非小細胞肺がん,小細胞肺がんともに,日本の1年生存率は最も高い値を示した.非小細胞肺がんにおいては特に顕著で,進行度別にも差があった.日本の非小細胞肺がん患者は他国に比べて腺がんの占める割合が高く,遠隔転移例が少なかった.結論.日本の肺がん患者の生存率が他国と比べて高い理由としては,CTの普及による早期診断に伴う腺がんが多い点,また早期診断が多い点が考えられる.
索引用語:生存率, 国際比較, がん登録
肺癌 55 (4):266─272,2015