第55巻第6号目次 | Japanese/English |
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─ 総説 ─
肺癌における新薬開発―新しい分子標的―
西尾 誠人11公益財団法人がん研究会有明病院呼吸器内科
肺癌においてdriver mutationの探索が盛んに行われている.RET(rearranged during transfection)遺伝子は,1985年にTakahashiらにより発見された受容体型チロシンキナーゼのひとつであり,甲状腺癌において,甲状腺乳頭癌の20~40%にRET融合遺伝子が存在することと,甲状腺髄様癌においてはRET遺伝子変異が認められることが報告されていた.さらに,2012年に同時期に4つの施設から非小細胞肺癌の約1%にRET融合遺伝子が存在することが報告され,ALKに続く,非小細胞肺癌の新たな標的遺伝子として注目されている.さらにRET阻害作用を有する薬剤として,sorafenib,sunitinib,cabozantinib,vandetanib,ponatinib,lenvatinib,regorafenib(BAY 73-4506)などがあり,これらはすでに甲状腺癌その他の癌腫において有効性が示され,すでに承認されている.そのため,RET肺癌に対してもすぐにでも臨床導入できる可能性がある.すでにRET融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌を対象に臨床試験が進行中であり,本シンポジウムではこれらの新薬開発について報告した.
索引用語:Driver mutation, 融合遺伝子, RET, 非小細胞肺癌(NSCLC), チロシンキナーゼ阻害剤
肺癌 55 (6):885─888,2015