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第55巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

高齢者肺癌患者に対する化学療法

岡本 浩明1
1横浜市立市民病院呼吸器内科・腫瘍内科

わが国では高齢者肺癌が急増しており,2012年の統計によると肺癌死の73%は70歳以上である.日本のガイドラインはEGFR/ALK遺伝子変異陰性もしくは不明の高齢者進行非扁平上皮(Non-SQ)非小細胞肺癌(NSCLC)に対しては,第3世代抗癌剤単剤を推奨グレードA,カルボプラチン併用療法をC1と位置付け,高齢者扁平上皮癌でも同様の記載である.しかし高齢者の単剤対併用の意義については,3つのメタアナリシスで相反する結果が示されており,明確な結論には至っていない.現在わが国では高齢者進行Non-SQ NSCLCを対象にドセタキセル単剤に対するカルボプラチン+ペメトレキセドの非劣性を検証する第III相試験が進行中である.EGFR遺伝子変異陽性の高齢者に対する比較試験はないが,複数の第II相試験に基づき,EGFR阻害剤の使用は概ね認知されている.局所進行型NSCLCについては,日本臨床腫瘍グループ(JCOG)は胸部放射線±カルボプラチン連日投与の第III相試験を行い,合併療法の優越性を証明した.高齢者の進展型小細胞癌はカルボプラチン+エトポシド(CE)が標準であり,現在JCOGでCEとカルボプラチン+イリノテカンを比較する第II/III相試験が進行中である.高齢者に対する簡易で効率的な高齢者総合的機能評価(CGA)が求められて久しいが,依然標準と言える評価法はない.今後も高齢者肺癌に対する臨床試験の蓄積が望まれる.
索引用語:高齢者, 化学療法, 小細胞肺癌(SCLC), 非小細胞肺癌(NSCLC), 高齢者総合的機能評価(CGA)

肺癌 55 (6):889─899,2015

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