タイトル
第55巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

肺癌の背景に見られる間質性肺炎をどう診断しマネージするか―外科的立場から―

伊達 洋至1, 佐藤 寿彦1, 渡辺 敦2, 近藤 晴彦3
1京都大学大学院医学研究科器官外科学講座呼吸器外科, 2札幌医科大学呼吸器外科, 3杏林大学呼吸器外科

目的.特発性間質性肺炎は肺癌発症リスクを増大させる.しかしながら,外科治療を含む抗癌治療の効果は明白ではない.特発性間質性肺炎の急性増悪を引き起こすかもしれないし,特発性間質性肺炎自体が進行性であり予後不良であるためである.そこで,我々は肺癌術後急性増悪を引き起こす予測因子と長期予後因子を同定することを目的に研究を行った.方法.2000年から2009年に日本の61施設で手術した1,763名の間質性肺炎を合併した非小細胞肺癌患者を後ろ向きに検討した.結果.急性増悪は9.3%に発症し,その死亡率は43.9%であった.多変量解析では,以下の7つの急性増悪発症リスク因子が同定された.解剖学的切除,男性,急性増悪の既往,術前ステロイド使用歴,KL-6高値,CT上UIP(通常型間質性肺炎)パターン,%VC低値である.残念ながら,有効な予防投薬は見いだせなかった.全体の5年生存率は40%であり,歴史的コントロールよりも不良であった.多変量解析では,楔状切除,%VC <80%,下葉発生肺癌が予後不良因子であった.注目すべきは,楔状切除は呼吸不全死を減少させたが,肺葉切除よりも癌再発の頻度が高いために長期予後は不良であった.我々は,さらに7つのリスク因子に重みを与えることにより,急性増悪を予測する簡単なリスクスコアを考案した.結論.我々は,7つの急性増悪リスク因子,3つの長期予後不良因子を同定し,リスクスコアを考案した.外科医は,それぞれの患者の急性増悪リスクを術前に予測することができ,適切な手術術式を選択することができるかも知れない.
索引用語:肺癌, 特発性肺線維症, 特発性間質性肺炎, 間質性肺炎, 急性増悪

肺癌 55 (6):900─904,2015

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