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第55巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

当院における肺がんに対するthoracoscopic lobectomyの成績

文 敏景1, 松浦 陽介1, 中尾 将之1, 中川 健1, 奥村 栄1
1がん研究会有明病院呼吸器外科

目的.当科で行っている臨床病期I期(c-I期)肺がんに対する胸腔鏡下肺葉切除術(TL;thoracoscopic lobectomy)の成績から,今後の手術適応拡大の可能性について検討する.対象・方法.2008年4月から2012年12月まで当科でc-I期肺がんに対して行ったTL 325例のうち,ND2a-1以上を行った238例を対象とし,同時期に行った開胸肺葉切除術(OTL;open thoracotomy lobectomy)255例と手術成績を比較した.結果.c-IA/IBはTL群211/27,OTL群181/74(p<0.001)であった.pII期以上にup stageした症例はTL 19例(8%),OTL 68例(27%)であり,セレクションバイアスを反映した結果であった.観察期間中央値43か月の5年全生存率はTL 91.2%,OTL 86.8%(p=0.021),5年無再発生存率はTL 89.5%,OTL 70.3%(p<0.001)であり,TL群で有意に良好であった.TL群13例(5%),OTL群59例(23%)に再発を認めたが,再発形式に差はなかった.TL群325例全例の検討では,cN0-pN1 11例,cN0-pN2 7例であったが,郭清領域の再発は認めなかった.また,開胸時洗浄細胞診陰性で閉胸時陽性の症例は認めなかったが,術後癌性胸膜炎を5例に認めた.結語.当院の胸腔鏡下肺葉切除は腫瘍制御の点から許容できる結果であった.今後は血管形成や気管支形成を伴わないc-N1症例やsingle station N2症例は,TLの適応となる可能性が示唆された.
索引用語:胸腔鏡下肺葉切除, 原発性肺がん, 再発形式

肺癌 55 (6):905─912,2015

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