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第55巻第6号目次 Japanese/English

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─ 総説 ─

粒子線治療

石川 仁1, 大西 かよ子1, 水本 斉志1, 大城 佳子1, 斎藤 高1, 加沼 玲子1, 奥村 敏之1, 櫻井 英幸1
1筑波大学医学医療系放射線腫瘍学

目的と方法.荷電粒子線はX線に対して物理学的に有利な放射線である.I期肺がんに対する定位照射,III期非小細胞肺がんに対する化学放射線療法における粒子線治療成績と今後の展望について考察した.結果.I期肺がんに対する粒子線治療は2~4方向の少ないビームで照射できるため,胸部照射で問題となる低~中線量で照射される肺の体積が少ない.とくに,腫瘍径が大きくなると粒子線治療の有益性が高い.進行肺がんに対する放射線治療ではI期肺がんに比べて照射体積がはるかに大きい上に,化学療法が同時併用される.X線では示すことができなかった高線量照射(74 Gy/37 fr)の有効性を陽子線治療で確認する目的で行われた日米の第II相試験では有望な成績が示されており,現在はX線と陽子線での比較試験が行われている.結論.X線での高精度治療技術に加え,スキャニングによる強度変調粒子線治療の臨床応用によって,将来の粒子線治療はさらに集中性の高い治療を提供できるようになる.比較試験の結果が待たれるが,本邦でも日本放射線腫瘍学研究機構に粒子線治療グループが設立され,前向きの多施設共通のプロトコールを立案中である.質の高いエビデンスの蓄積によって,粒子線治療の真の有効性を示す時期を迎えている.
索引用語:肺がん, 粒子線治療, 化学放射線療法, 線量体積ヒストグラム, 放射線肺障害

肺癌 55 (6):924─931,2015

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