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第55巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

BIM遺伝子多型に起因するEGFR-TKI耐性の治療法開発の現状

竹内 伸司1
1金沢大学がん進展制御研究所腫瘍内科

近年,EGFR変異肺がん細胞のアポトーシス抵抗性がEGFR-TKI耐性を早期に誘導する因子として報告されてきている.BH3-only蛋白であるBIMはEGFR変異肺がんのEGFR-TKIによるアポトーシス誘導に必須である.このBIM遺伝子において2番目のイントロンの2903塩基が欠失する多型を有すると,活性型BIM蛋白質の発現が低下し,EGFR-TKIによるアポトーシスに抵抗性を示す.このBIM遺伝子多型は東アジア人特異的に約13%に検出されており,EGFR-TKI耐性のバイオマーカーとなり得ることが示唆されている.我々は,ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるボリノスタットをEGFR-TKIに併用することで,活性型BIM蛋白質の発現を促進し,BIM遺伝子多型に起因するアポトーシス抵抗性を克服できることを明らかにした.得られた知見を基に,BIM遺伝子多型を有するEGFR変異肺がんを対象としてゲフィチニブにボリノスタットを併用する第I相試験を,多施設共同医師主導治験として実施している.
索引用語:上皮成長因子受容体(EGFR)変異肺がん, EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI), アポトーシス, BIM遺伝子多型, ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬

肺癌 55 (6):941─947,2015

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