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第55巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

非小細胞肺癌における抗HER3抗体patritumabによるEGFR阻害剤耐性の克服について

米阪 仁雄1
1近畿大学医学部腫瘍内科学部門

目的.非小細胞肺癌におけるEGFR阻害剤の耐性機序を解明し,抗HER3抗体patritumab(Pmab)とEGFR阻害剤erlotinib(Erl)の併用効果を確認する.そしてこの効果を予測するバイオマーカーとしてHER3受容体のリガンドであるヘレグリン(HRG)の有用性について評価する.方法.HRG遺伝子を導入したEGFR遺伝子変異型肺癌細胞株PC9HRGを用いてErl,Pmab及び両薬剤の併用に対する感受性や細胞内シグナル伝達について評価する.非小細胞肺癌症例を対象としたPmabとErl併用療法の第II相臨床試験において,HRGの発現を評価する.結果.Erl感受性PC9細胞株は,HRG遺伝子の導入によって同薬剤に対し耐性化し,これはHRGに依存したHER3受容体の活性化によるものであった.そしてPC9HRG株はPmabの併用によってErlへの耐性を克服された.第II相臨床試験の結果,HRG高発現症例においてPmabとErlの併用療法はプラセボとErlの併用療法に比べ有意に無増悪生存期間を延長した.結論.肺癌においてHRGはEGFR阻害剤への耐性化をもたらすが,この耐性はPmabの併用療法により克服された.
索引用語:パトリツマブ, エルロチニブ, ヘレグリン, 非小細胞肺癌, 上皮成長因子受容体

肺癌 55 (6):948─955,2015

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