タイトル
第55巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺静脈内に急速に進展し完全切除後早期に再発した肺紡錘細胞癌の1例

横田 圭右1, 北川 論2, 齋藤 雄史1, 滝 俊一3, 杉野 安輝3, 山川 洋右1
トヨタ記念病院 1呼吸器外科, 2病理診断科, 3呼吸器科

背景.肺紡錘細胞癌は,紡錘形の腫瘍細胞からのみなるきわめて稀な癌腫で,急速な進行や化学療法抵抗性などから,予後不良とされる.症例.症例は78歳女性.検診異常で当院受診.初診時CTで右肺S2に45 mm大腫瘤,右肺門および縦隔リンパ節腫大を認めた.CTガイド下生検にて,低分化の非小細胞肺癌で,多形,肉腫様癌が疑われ,cStage IIIAと診断した.初診時より1.5か月後のCTでは,腫瘍は55 mm大へ増大し,上肺静脈内を中枢側に進展していた.有効な化学療法も期待されないため,右肺上葉切除,ND2a-2郭清を施行した.肺静脈については,心嚢内で右上肺静脈を遮断し,上葉肺静脈を開いて腫瘍先端が同静脈内に留まることを確認した後,断端を縫合閉鎖した.病理組織学的に,紡錘細胞癌,pStage IIIAと診断された.全身状態から経過観察のみ行ったが,術後3か月で右鼠径部や骨盤内リンパ節,臀部の軟部組織に転移し,術後9か月で癌死した.結論.肺紡錘細胞癌は,完全切除症例でも術後早期に再発,転移する可能性が高い.きわめて稀な腫瘍であり,症例報告の集積,知見により集学的治療の成績改善が待たれる.
索引用語:肺紡錘細胞癌, 多形癌

受付日:2015年2月19日
受理日:2015年7月26日

肺癌 55 (6):1008─1013,2015

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