第55巻第6号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
喀痰細胞診が偽陽性を呈し手術を施行した気管支異物の1例
河合 紀和1, 川口 剛史1, 安川 元章1, 中井 登紀子2, 大林 千穂2, 東条 尚1奈良県立医科大学 1胸部・心臓血管外科, 2病理診断学講座
背景.今回,喀痰細胞診で“疑陽性”を示し,肺癌との鑑別が問題となった気管支異物の手術症例を経験したので,報告する.症例.70歳代男性.持続する咳嗽を主訴に胸部CTを撮影した.右上葉支の狭窄を認め,精査目的に当院を紹介受診した.喀痰細胞診で“疑陽性(suspicious),腺癌を疑う”と診断され,気管支鏡検査では右B3入口部に一部壊死を伴う隆起病変を認めた.FDG-PETでは同部位及び右肺門部にFDGの集積を認めた.以上の経過から右上葉中心型肺癌(cT1aN1M0)と診断し,右肺楔状スリーブ上葉切除を施行した.術後病理組織診では,B3入口部の病変は異物(食物残渣)であり,周囲上皮には再生性異型や扁平上皮化生が認められた.喀痰細胞診でみられていた異型腺上皮細胞は,びらんによる反応性の気管支上皮であった可能性があると思われた.結論.喀痰細胞診で腺癌を疑われ,その他の検査も合わせて肺癌と診断し,胸腔鏡下肺葉切除を行ったが,気管支異物であった1例を経験した.
索引用語:喀痰細胞診, 異物, 肺癌, 偽陽性, 胸腔鏡下手術
受付日:2015年6月27日
受理日:2015年8月20日
肺癌 55 (6):1024─1028,2015