タイトル
第55巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

小細胞肺癌頭蓋内再発病変に全脳照射を施行したところ3カ月後に白質脳症と考えられる病態を呈した1例

高木 順平1, 中川 雅登1, 武智 浩子2, 喜多村 次郎2, 田久保 康隆2, 野口 哲男1
市立長浜病院 1呼吸器内科, 2呼吸器外科

背景.白質脳症は,大脳白質に多巣性の脱髄性病変を生じる病態である.悪性腫瘍の治療の進展に伴い,抗癌剤や放射線照射に伴う白質脳症が指摘されている.症例.74歳男性.右上葉の限局型肺小細胞癌と診断され,シスプラチン+イリノテカンによる化学療法を開始したところ,重篤な貧血が出現し化学療法の継続が困難となった.原発巣は消失しており,腫瘍に関しては寛解と判断し外来での経過観察とし,貧血の治療を継続したところ,貧血は改善したが1年3カ月後に頭蓋内再発を認め,総線量30 Gy/10分割の全脳照射を施行したところ,照射後3カ月で白質脳症を発症した.退院後7カ月を経過した時点で,明らかな肺癌再発は認めていないが,ADLは徐々に低下傾向にある.結論.先行する化学療法において著しい有害事象を認める場合やperformance statusの悪化を伴った場合には,全脳照射の線量分割の方法について,神経障害を考慮して慎重に検討することが望ましい.
索引用語:白質脳症, 限局型小細胞肺癌, 全脳照射

受付日:2015年5月27日
受理日:2015年10月27日

肺癌 55 (7):1098─1103,2015

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