タイトル
第55巻第7号目次 In Japanese

─ 編集後記 ─

編集後記

塩野 知志
山形県立中央病院呼吸器外科

最近10年間でEGFR-TKIの登場に始まり,ALK阻害剤,さらには免疫チェックポイント阻害剤の出現により,代表的な難治癌のひとつであった肺癌も着実に成績が向上してきました.また我が国が世界をリードする小型肺癌の外科手術成績も5年生存率が80-90%得られる時代になりました.これからの肺癌治療はいかに生存を延ばすかだけでなく,その質が問われることになっていくものと思われます.現在日本肺癌学会では肺がん医療向上委員会を中心に一般市民への広報活動が活発に行われるようになっています.治療の質だけでなく患者さんの生活の質を高めるために,我々医療者だけでなく,患者さんや家族と手を携えて肺癌診療を行っていく必要性を痛感しております.今回は原著3編,症例報告6編が掲載されました.これらのうち原著で我が国の術後補助化学療法の現状と臨床試験後の論文化のデータが示されました.いずれも英文論文では論文化されにくい内容であり,我が国固有の実態調査を公表することも日本肺癌学会の「肺癌」の重要な役割と思われます.また原著1編ではUMIN臨床試験登録システムを利用し臨床研究がどの程度論文化されているかが検討されています.publication biasについても言及され,いわゆるnegative studyでも公表することの重要性やmeta-analysisを盲目的に信用することへの警告がなされています.統計学的データを鵜呑みにすることなく冷静な判断が必要と再認識されました.症例報告の中では3例の稀な腫瘍が報告されています.稀少がんはエビデンズが構築されにくく,未だ臨床現場では診断治療に苦悩することが少なくありません.患者さんひとりひとりの貴重なデータを積み重ねてよりよい治療の開発に取り組む必要があります.   最後に多忙な業務の中,論文投稿していただいた先生方ならびに査読にご協力してくださった先生方に厚く御礼を申し上げます.

肺癌 55 (7):1133─1133,2015

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