タイトル
第56巻第1号目次 In Japanese

─ 巻頭言 ─

2016年,肺癌治療新時代の幕開け

倉田 宝保
学会誌「肺癌」副編集長 関西医科大学附属枚方病院 呼吸器腫瘍内科 診療教授

読者の皆様,あけましておめでとうございます.2000年以降,肺癌に対する薬物療法の発展はめざましいものがありますが,2016年今年は,肺癌治療において特に画期的な年として未来永劫,記憶に残るものと思います.といいますのもニボルマブをはじめとする抗PD-1抗体(ニボルマブの承認は2015年末でしたが),第3世代EGFR阻害剤,新規のALK阻害剤,カルチノイドに対するmTOR阻害剤,VEGFR2受容体抗体が一気に承認されることが予想されているからです.1999年パクリタキセルやゲムシタビンなどの第3世代抗癌剤が承認された年が思い起こされますが,この当時も肺癌治療成績が劇的に改善するととても期待されていたことを思い出します.しかしながら,これらはすべて殺細胞性抗がん剤でした.今回は分子標的薬剤や新規の癌免疫療法など作用機序がまったく異なる薬剤が実地医療で使用することが可能になり,また適応症例もそれぞれ異なっていることから,より多くの患者様に恩恵がもたらされることが期待されます.1999年当時とは異なり、肺癌治療に関わるすべての医療関係者はこれらの薬剤の特徴や副作用プロファイルの勉強が必要となり,より忙しい1年になると思われます.EGFR遺伝子変異陽性例に対し,標準的治療となっているゲフィチニブは当初は非小細胞肺癌全般に対し承認されていました.しかしながら,承認後に多くの症例での実績,経験を積み,結果,EGFR遺伝子変異陽性例に有効であることが導かれました.同様に,今回新たに承認される薬剤においても,承認前のエビデンスだけでは不十分なケースも想定され,実地医療での多くの経験,実績がより適切な使用方法へと導いてくれることは過去が証明しております.これらの薬剤が承認されたのち,各医療機関で多くの症例経験を積まれるものと思います.読者の皆様,ぜひともこの多くの経験を学会誌「肺癌」に投稿していただければと思います.私の初めての論文投稿は20年以上前にさかのぼりますが,G-CSF産生肺癌の症例報告をこの「肺癌」にでした.そのときの達成感,感動,喜びは今も忘れておりません.グローバル化の波は確実に押し寄せてはいますが,この和文雑誌であります「肺癌」はおそらく肺癌に関わるすべての医療者にとってはなお特別なものと推測いたします.老若男女を問わず,ぜひとも多くの原著論文,症例報告を投稿下さい.昨年の巻頭言におきましても「肺癌」編集委員長であります杉尾教授よりいくつかの試み(優秀論文賞の制定,学術集会での教育講演内容の掲載等)が報告されましたが,今年度以降もさらに魅力ある雑誌になるべく,編集委員全員でさらなる試みを模索しておりますので,学会誌「肺癌」を今年もどうぞよろしくお願い申し上げます.

肺癌 56 (1):1─1,2016

ページの先頭へ