タイトル
第56巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

他肺葉の多発肺内リンパ節転移を認めた原発性肺癌の1例

水谷 尚雄1, 柳沼 裕嗣1, 西江 尚貴2, 鈴鹿 伊智雄2
医療法人伯鳳会赤穂中央病院 1呼吸器外科, 2外科

背景.肺内リンパ節の存在は肺癌の肺内転移と紛らわしいことがあるが,肺癌が肺内リンパ節に転移することは稀である.症例.症例は左上葉原発非小細胞肺癌の81歳女性で,同側上下葉の胸膜下の複数の結節が指摘されていた.適応が成立するならば,根治手術である左上葉切除を希望されたため,左下葉胸膜下結節の病理診断をつけるべく胸腔鏡手術を施行した.術中凍結診断で肺癌の肺内リンパ節転移であることが判明し,これ以上の手術は断念した.著者らが渉猟した限りでは,同側他葉内肺内リンパ節への肺癌転移の報告はなく,このような珍しいリンパ行性転移を来した機序につき文献的考察を加えた.結論.胸膜下結節に遭遇した場合,最も可能性の高い診断のひとつに肺内リンパ節が挙げられるが,当該癌腫が同リンパ節に転移する可能性が示された.呼吸器外科医は肺に存在する悪性疾患を扱う時に,胸膜下結節が生検しやすい局在である場合は,生検を躊躇すべきでない.
索引用語:肺癌, 肺内リンパ節, 転移

受付日:2015年6月30日
受理日:2015年12月12日

肺癌 56 (1):38─42,2016

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