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第56巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 第30回日本肺癌学会肺癌ワークショップ ─

マルチ診断薬による肺癌最適化医療に向けての取り組み

西尾 和人1
1近畿大学医学部ゲノム生物学

背景・目的.肺癌薬物療法において,遺伝子異常を特定し治療選択を行う最適化医療が進んでいる.たとえばALK融合遺伝子の検出などの診断キットは,ALK阻害剤の適否に必須であり,コンパニオン診断薬と呼ばれる.今後複数のドライバー遺伝子の検出を行う必要があり,マルチ診断技術を用いたクリニカルシーケンスの実施が重要である.我々は,クリニカルシーケンシングの実施可能性,臨床的有用性を検討した.近畿大学医学部およびゲノムセンターにおいて,次世代シーケンサーを用い,マルチ診断薬のプラットフォームを構築し,その非臨床性能試験の後,臨床的な実施可能性を探るため,同附属病院受診の患者のうち,同意を得た患者のホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍薄切を用いて,抽出した核酸を用い,各種ターゲットリーシーケンスを実施,標的となり得るドライバー遺伝子が陽性の患者は適応となる分子標的薬治療を受けた.結果.クリニカルシーケンシングによりドライバー遺伝子陽性で,対応する分子標的薬の治療を受けた患者は,そうでない患者に比し生存率が良好であった.結論.非小細胞肺癌患者において,ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍薄切を用いたクリニカルシーケンシングの有用性が示された.
索引用語:次世代シーケンサー, クリニカルシーケンシング, ホルマリン固定パラフィン包埋, リキッドバイオプシー, ドライバー遺伝子

肺癌 56 (1):48─54,2016

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