第56巻第1号目次 | Japanese/English |
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─ 第30回日本肺癌学会肺癌ワークショップ ─
肺がんのバイオマーカー:分子標的薬耐性を中心に
矢野 聖二11金沢大学がん進展制御研究所腫瘍内科
肺腺がんにおいて,EGFR遺伝子変異の発見を皮切りにALK融合遺伝子やROS-1融合遺伝子,RET融合遺伝子など,数多くのドライバー遺伝子異常が発見された.EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)とALK-TKIは既に認可されて,一般臨床の場で使用されている.それ以外のドライバーを有する肺がんに対しては,現在対応する分子標的薬による治験が行われており,有効性が検討されている.一方,EGFR-TKIやALK-TKIは,それぞれEGFR変異やALK融合遺伝子を有する肺がんに対し一旦奏効するが,数年以内に獲得耐性により再発することが次なる臨床的問題となっている.最も代表的な耐性機構は標的遺伝子の2次的変異である.2次的変異にも有効な次世代EGFR-TKIやALK-TKIも開発が進められている.アポトーシス抵抗性も重要な耐性機構の一つである.東洋人特異的なBIM遺伝子多型はEGFR-TKI耐性を惹起する.我々は,HDAC阻害薬ボリノスタットを併用することでBIM遺伝子多型に起因したEGFR-TKI耐性を解除しうることを明らかにし,現在EGFR-TKIとボリノスタット併用の医師主導治験(VICTORY-J)を行い,安全性と有効性を検討している.
索引用語:EGFRチロシンキナーゼ阻害薬, ALKチロシンキナーゼ阻害薬, 獲得耐性, T790M変異, BIM遺伝子多型
肺癌 56 (1):55─60,2016