タイトル
第56巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

ゲフィチニブ投与にて病勢の進行を緩和し得た非喫煙者のEGFR遺伝子変異陽性混合型小細胞肺癌の1例

高原 豊1, 野尻 正史1, 小島 好司1, 水野 史朗1, 長内 和弘1, 栂 博久1
1金沢医科大学呼吸器内科学

症例.74歳の女性.胸部X線異常陰影の精査目的で当院紹介受診となった.全身精査の結果,小細胞肺癌(cT2N3M0,Stage IIIB,限局型)と診断され,同時放射線化学療法(カルボプラチン+エトポシドを6コースと胸部放射線治療45 Gy/30 Fr)が施行され,治療効果はSDであった.その後は病勢コントロールされていたが,1年後に多発脳転移で再燃し当科入院となった.全脳照射(30 Gy/10 Fr)施行後,全身化学療法(カルボプラチン+エトポシド)を施行したが,抗癌剤の副作用と原病進行のためPS 1から4まで悪化し,全身状態悪化を認めた.非喫煙者の小細胞癌で,初診断時の病理組織標本にて腺腔構造の形成が認められたことから,EGFR遺伝子検索を行ったところ活性型EGFR遺伝子変異(Exon21:L858R)が陽性であり,混合型小細胞肺癌の診断でゲフィチニブ内服治療が開始された.治療後PS 4から2に改善がみられ,退院が可能となった.最終的に原病の進行に伴う呼吸不全のため,ゲフィチニブ治療開始約2ヶ月後に死亡した.結論.ゲフィチニブ投与にて病勢の進行を緩和し得た非喫煙者のEGFR遺伝子変異陽性混合型小細胞肺癌の1例を経験した.全身化学療法施行困難なPS不良のEGFR変異陽性混合型肺小細胞癌において,ゲフィチニブは治療選択肢の一つとなり得る可能性が示唆された.
索引用語:混合型小細胞肺癌, EGFR遺伝子変異, ゲフィチニブ, QOL

受付日:2015年12月17日
受理日:2016年2月22日

肺癌 56 (2):124─129,2016

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