タイトル
第56巻第2号目次 In Japanese

─ 編集後記 ─

編集後記

野上 尚之
国立病院機構四国がんセンター呼吸器内科

本号は,原著が3編,症例報告が6編,短報が2編から構成されております.原著の一編は,発熱性好中球減少症(FN)の重症化を予測するMultinational Association of Supportive Care in Cancer(MASCC)スコアとClinical Index of Stable Febrile Neutropenia(CISNE)スコアの有用性を比較検討したものでした.肺癌化学療法では血液疾患ほどFNの頻度は高くないものの,FNは化学療法時の治療関連死の大きな原因の一つであり,その予測因子を検討することは有益です.今回の内容は肺癌以外の疾患も入ったものでしたが,是非肺癌に特化し症例数を増やした今後の発表を期待します.また別の原著では手術症例における石綿関連肺癌の検討が報告されました.石綿曝露に関しては患者自身も医師も石綿関連疾患に関する認識が十分でなく,肺癌診療時には石綿曝露歴の詳しい問診や石綿小体や胸膜プラークなど石綿曝露を疑う医学的所見の有無に注意すべきことが改めて記されています.もう一編の原著は日本人症例における脳転移肺癌症例に対するベバシズマブの検討です.海外でのデータは豊富にあるものの,本邦症例でも患者選択を適切に行えば安全に投与できることが示されています.昨年末のNivolumb,今年になってからのOsimertinib,そしておそらく新規のVEGFR-2抗体の承認も今年は予想されており,間違いなくここ数年では最も肺癌化学療法の変革が大きい一年になると思われます.これらの薬剤が適正に使用され,より多くの患者さんに恩恵をもたらすことを切に望みます.我々もこの学会誌を知見の共有場所として有益に活用し,より有効で最適な使用法をこれから探索して行きましょう.最後に投稿いただいた先生方,査読いただいた先生方に,こころより感謝申し上げます.

肺癌 56 (2):176─176,2016

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