タイトル
第56巻第3号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (629K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

多彩な神経症状を呈した小細胞肺癌に伴う傍腫瘍性神経症候群の1例

山子 泰斗1,3, 埴淵 昌毅1, 荻野 広和1, 村上 永尚2, 梶 龍兒2, 西岡 安彦1
徳島大学大学院医歯薬学研究部 1呼吸器・膠原病内科学分野, 2臨床神経科学分野, 3JA高知病院内科

背景.傍腫瘍性神経症候群は担癌患者に生じる神経障害であり,腫瘍の転移や浸潤・圧排,代謝異常や栄養障害によるものではなく,自己免疫学的機序による神経系の障害により生じる.傍腫瘍性神経症候群を合併する腫瘍は小細胞肺癌が最も多いとされている.症例.77歳男性.従来自立した生活を送っていたがX年10月頃より倦怠感が出現した.その後歩行障害が進行し排尿障害も出現したため,X+1年5月中旬に当院紹介となった.構音・嚥下障害や両下肢の運動・感覚障害,自律神経失調など多彩な神経症状を認め,精査によりLambert-Eaton症候群と診断された.自己抗体検査では,抗amphiphysin抗体,抗ガングリオシド(GM1,GT1b)抗体が陽性であった.精査にて小細胞肺癌cTXN2M1b(Stage IV)と診断した.PS 4のため化学療法の適応はないと判断した.免疫グロブリン大量療法を施行するも神経所見は改善しなかった.緩和医療目的に近医に転院し,X+1年10月下旬に死亡した.結論.複数の自己抗体が検出され多彩な神経症状を呈した小細胞肺癌に伴う傍腫瘍性神経症候群の1例を経験した.
索引用語:傍腫瘍性神経症候群, 小細胞肺癌, Lambert-Eaton症候群, 抗amphiphysin抗体, 抗ガングリオシド抗体

受付日:2015年11月9日
受理日:2016年3月16日

肺癌 56 (3):199─204,2016

ページの先頭へ